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あわやのしぜん
 庄原養護学校三次・粟屋分級は広島県北部の三次市にあります。近隣には三次の雲海で有名な高谷山(標高490m)があり,分級はその中腹,標高約230mに位置しています。分級周辺は緑で囲まれ,山から流れてくる水の音が絶え間なくしています。気候は日本海側に近く,冬季は雪に閉ざされる日が何度かあります。このような環境の中で,県南部とはまた違った植物や動物が見られます。
 こうした自然に囲まれた身近な環境で,どんな生物がどのように生きているのか,季節の移り変わりでどのように変化していくのかを調べることは,分級の生徒にとってとても良い教材になります。
 ここでは分級周辺の生物,特に植物について公開していきます。

 

アオイスミレの写真    
アオイスミレ Viola hondoensis
スミレ科
 スミレの中では一番早い時期に咲きます。分級の前の畑や道路脇の崖にたくさんあります。開花期はひと株が丸く平らに広がっています。全体に毛深く,他のスミレと区別しやすいです。果実も毛深くて球形で,種子は飛び散りません。また,アリが好む大きな種枕という付属体が付いており,他種とは全然ちがいます。
平成17.4.5 三次市粟屋
シハイスミレの写真
シハイスミレ Viola violacea
スミレ科
 シハイスミレは,葉の裏が紅紫色になるため紫背スミレと書きますが,同じ特徴を持つスミレもいくつかあります。葉は無毛です。ピンク色の花で側花弁に毛はありません。松林など,わりと乾燥するところによく生えています。分級に入る道の脇に数株あります。
平成17.4.21 三次市粟屋
                
オオタチツボスミレの写真
オオタチツボスミレ Viola kusanoana
スミレ科
 北日本から山陰の多雪地帯に多く,分級周辺にはやや湿り気のある所にたくさんあります。大きな株になって,茎を伸ばして開花していますはタチツボスミレよりやや大きく,後ろに突き出ている距が白いところは見分けるポイントの一つです。葉は丸みがあって大きく,柔らかい葉質で明るい緑色です。
平成17.4.21 三次市粟屋
タチツボスミレの写真
タチツボスミレ Viola grypoceras
スミレ科
 日本全土に分布する代表的なスミレです。北海道から沖縄まで,海岸近くから亜高山帯までたいていのところで見られます。分級付近でも個体数が多く,地上茎を伸ばして群生するときもあります。ソメイヨシノとちょうど同じ頃か終わり頃によく咲いています。
平成17.4.5 三次市粟屋
スミレの写真
スミレ Viola mandshurica                 
スミレ科
 ただ単に「スミレ」という名前は植物の中では珍しいほうです。例えば,タンポポではセイヨウタンポポというように正式な和名が付けられています。この名は大工道具の墨入れに花の形が似ているので名付けられたといわれています。すみれ色というくらい濃い青紫色で,側花弁に多数の毛が生えています。葉柄には翼があり,葉は細長いへら状です。分級に入る道の空き地に群生しています。
平成18.4.26 三次市粟屋
                    
コスミレの写真
コスミレ Viola japonica
スミレ科
 小スミレと書きますが,そんなに小さいスミレではないようです。茎が長く伸びることはなく,根元から花茎が伸びています。花の色は淡い紫色のものが多く,側花弁には普通毛がありません。葉はスミレと違い,やや丸みのある長三角形か長卵形です。高谷山の頂上付近に咲いています。
平成18.4.17 三次市粟屋
ニョイスミレの写真
ニョイスミレ Viola verecunda
スミレ科
 湿った場所を好みます。分級前の山を少し上がれば水が出ている周辺にたくさんあります。地面をはう茎を伸ばして広がり,スミレの中でも小さくて上下に押しつぶしたような花を付けます。葉の形が,仏具の如意に似ているところから名付けられました。開花時期はわりと遅く,ソメイヨシノが散る頃からよく咲きます。
平成18.4.26 三次市粟屋
                 
ノジスミレの写真
ノジスミレ Viola yedoensis
スミレ科
 スミレによく似ていますが,本種の特徴として側花弁に毛がなく,花茎に毛があり,葉柄に翼はない,葉は長細い三角形などがあります。見慣れると,スミレより毛深く葉幅も広いのでぼってりした印象になります。また,良い香りがすることもあります。子鹿学園の駐車場から少し上に上がった土手にあります。
平成17.4.5 三次粟屋
                 
ニオイタチツボスミレの写真
ニオイタチツボスミレ Viola obtusa         
スミレ科
 名前の通り,いい香りがします。しかし,時間帯や人によっては香りを感じないこともあります。タチツボスミレによく似ていますが,茎など全体に細かい毛が生えていること,色が比較的濃く中心が白く抜けていること(色の濃さは個体差があります),葉は卵形をしていること,香りがあることで区別できます。日当たりの良い山地の草原や崖に生えています。分級近くでは,学園の駐車場近くの崖で1カ所だけあります。
平成17.4.21 三次市粟屋
             
ヒメスミレの写真                  
ヒメスミレ Viola confuse subsp.nagasakiensis
スミレ科
 人家の付近に多い小さいスミレです。本州のものは生育環境から見てあまり古くない帰化植物ではないかともいわれています。コンクリートやアスファルトの隙間にも平気で生えています。葉は三角で、花茎は多種と比べてずいぶん細いです。花の側弁に毛があります。分級に続く道の植え込みの下にあります。
平成18.4.26 三次市粟屋
アカバナの写真
アカバナ Epilobium pyrricholophum
アカバナ科

 低地や山地の湿ったところに生えています。花は淡いピンク色で直径1pと少し小さめです。花後に子房が5pくらいに伸びて目立ちます。アカバナ科にはツキミソウやマツヨイグサがあり,これらの方がよく知られています。赤花というより,花後に葉が赤くなるので赤葉菜と書くそうです。高谷山へ上がる道の途中,法面から水がしみ出ているところにだけ生えています。

平成17.8.30 三次市粟屋

アキカラマツの写真
アキカラマツ Thalictrum minus var. hypoleucum
キンポウゲ科
 山地の日当たりの良い草原や崖に生えています。カラマツソウの仲間は花弁が無く,萼片とシベのみです。その萼片も開花後はすぐに落ちてしまうので,普通シベしか見ることはありません。秋に咲くこの花が唐松の葉が出ているところに似ているので名付けられました。分級の裏山の崖にたくさん咲きます。

平成17.8.26 三次市粟屋

オオバクサフジの写真
オオバクサフジ Vicia pseudo-orobus
マメ科
 日本全土の林縁や原野に生えるツル性の多年草です。しかし,いくつかの県では個体数が減少して絶滅寸前になり,レッドデータブックに記載されています。小葉は2〜5対あり,近縁種の中では3〜5pと最大です。子鹿学園の駐車場付近の崖に生えています。
平成17.8.26 三次市粟屋
ツリニンジンの写真
ツルニンジン Codonopsis lanceolata
キキョウ科
 つる性で,根が朝鮮人参に似ているのでこの名前がつきました。別名はジイソブ(爺蕎)と呼び,これに似た植物のバアソブ(婆蕎)に対応しています。「そぶ」というのは「そばかす」という意味で,木曽の方言だそうです。ホオズキのようなものはつぼみです。子鹿学園の駐車場近くの藪に生えています。
平成18.9.11 三次市粟屋
トキワイカリソウの写真
トキワイカリソウ Epimedium sempervirens
メギ科
 冬でも葉が枯れずに春まで残るところから,常緑という意味でトキワとついています。普通のイカリソウより花が大きく,主に多雪地帯である日本海側を中心に分布しています。山陰や北陸の本種は花が白い場合が多いのですが,当地ではきれいなピンク色の個体が多いです。個体によって色の濃淡はあります。分級周辺では,日当たりがあまり良くない湿り気の多い山の中にたくさん生えています。

平成17.4.21 三次市粟屋

ナンテンハギの写真
ナンテンハギ Vicia unijuga
マメ科
 林縁などに生える多年草です。葉は2枚の小葉からなり,フタバハギの別名があります。花の時期は長く,梅雨時から秋にかけて咲きます。食用のソラマメとは属が同じです。飛騨高山では春先の若い芽をアズキナといって食べるそうです。子鹿学園駐車場近くの崖に生えています。

平成17.8.26 三次市粟屋

ネコノメソウの写真
ネコノメソウ Chrysosplenium grayanum
ユキノシタ科
 水が流れている脇など,山地の湿ったところに生えています。雪が解けるとすぐ開花し始めます。群生していると見事です。花後の実(刮ハ)の先端が縦に割れ目が入り,瞳が細くなったネコの目に似ているので名付けられました。分級周辺では,水が出ている周りにたくさん生えています。
平成17.4.4 三次市粟屋
ボタンヅルの写真
ボタンヅル Clematis apiifolia
キンポウゲ科
 落葉性のツル植物で,園芸種では大きな花を咲かせるクレマチスの仲間です。4枚の花弁に見えるものは萼片で,多数ある雄しべの花糸は幅が広く,花をより目立たせています。花弁はありません。種子は紫色を帯び,タンポポのように毛があって風で散布されます。葉の形がボタンの葉に似ているところから名付けられました。分級の畑のフェンスに巻き付いています。

平成17.8.26 三次市粟屋

マメダオシの写真
マメダオシ Cuscuta australis
ヒルガオ科
 日本全土に分布している1年草です。しかし,環境の悪化や外来種との競争で少なくなっています。 国外ではシベリアから中国,台湾,東南アジア,オーストラリアなどに広く分布しています。根がない寄生ツル植物で,他の植物にからみついて水分や栄養をとっています。種子はトシシという漢方薬です。高谷山線から分級のほうへ曲がってすぐにあります。

平成17.8.30  三次市粟屋

ヤマルリソウの写真
ヤマルリソウOmphalodes japonica 
ムラサキ科
 山地の湿り気が多いところに生える多年草です。ワスレナグサに近い仲間で,きれいな淡青紫色の花を付けます。この株は分級正面の山道で2株だけ見つけましたが,この上の高谷山の駐車場付近には大群落があります。本来なら一つの茎に5花くらい,一株から5,6本の花茎が出るのでたくさん咲きます。

平成17.4.23 三次市粟屋

ッコウライテンナンショウの写真
コウライテンナンショウArisaema peninsulae
サトイモ科
 湿った日陰を好むようです。変わった形の花ですが,色はやや紫がかった茶色の個体も見られました。根元の皮の模様から,マムシグサの名前もありますが,変異が多く分類が難しくてはっきりしていません。この花の種類を集める熱心な収集家もいます。分級の正面の山中によく生えています。
平成17.4.23 三次粟屋
ショウジョウバカマの写真
ショウジョウバカマHeloniopsis orientalis
ユリ科
 山地の湿った日陰に多く生えています。ショウジョウ(猩々)とは中国の伝説上の動物で,酒が好きで赤い顔をしており,葉の重なりは袴(はかま)を連想させることが名の由来です。分級の正面の斜面などにかなりたくさん咲いています。

平成17.4.14 三次市粟屋

ウグイスカグラの写真
ウグイスカグラLonicera gracilipes var.glabra
スイカズラ科
 別名ウグイスノキです。名前の由来ははっきりしていません。茂みになるからウグイス隠れ,花の蜜を吸う様子や実を食べる様子が神楽を舞っているように見えるからウグイス神楽など,諸説あります。落葉低木で蔓にはならないのでカズラではありません。果実は初夏に赤く実り食べられます。子鹿学園の南側の山にあります。

平成18.4.26 三次市粟屋

コケイランの写真
コケイランOreorchis patens
ラン科
 山地のやや湿った林内に生える多年草です。笹に似た葉は普通2枚有り,そのわきから花茎を立てます。別名ササエビネです。薄暗い林縁で明るい色彩で咲いています。ランは盗掘にあいやすく,つぼみが開くのを楽しみに1週間後に行くと,穴を残すだけになっていました。この花を守るために花を切っておけば良かったと後悔しました。

平成18.5.11 三次市粟屋

ツリフネソウの写真
ツリフネソウImpatiens textori
キキョウ科
 山地の水辺,渓流沿いなどに群生する1年草です。帆掛け船を逆さに吊したような花の形から釣船草といいます。花の後ろには細くてくるっと巻いた距があります。ホウセンカと同じ仲間です。粟屋のゴルフ場横の山から水がしみ出ているようなところに咲いています。

平成18.10.10 三次市粟屋

キバナアキギリの写真
キバナアキギリSalvia nipponica
シソ科
 秋に咲く黄色い花で,葉が桐に似ているから黄花秋桐です。学名は日本のサルビアという意味です。林縁の薄暗い湿り気のあるところに群生します。普通は黄色のみの花ですが,この周辺にある本種は赤い斑点が入りきれいです。分級周辺の山際にたくさんあり,開花時期は見事です。

平成18.10.6 三次市粟屋

ミソハギの写真
ミソハギLythrum anceps
ミソハギ科
 旧暦のお盆の頃に咲くのでボンバナ(盆花)とも呼ばれるそうです。語源は禊萩(みそぎはぎ)だとも溝萩(みぞはぎ)だとも言われています。後者の語源が示すように,山野の湿地に生える多年草です。子鹿学園の駐車場近く,山から水がしみ出ているところに生えています。

平成17.8.26 三次市粟屋

ウマノアシガタの写真
ウマノアシガタRanunculus japonicus
キンポウゲ科
 光沢のある黄色い花を咲かせます。もとは八重咲きのものを金鳳花(きんぽうげ,一重を馬の足形と呼んでいました。一番根元の葉が馬の足形に似ているとされていますが,あまり似ていません。有毒植物なので食用はできません。分級の上の湿った山沿いにたくさん咲きます。
平成17.4.21 三次市粟屋
ヤマジノホトトギスの写真
ヤマジノホトトギスTricyrtis affinis
ユリ科
 日陰の林床や林縁に生える多年草です。花弁に濃紫色の斑点が入る様子を鳥であるホトトギスの体の模様に見立てて名付けられました。花は3・4日で枯れてしまいますが,次々と咲くのでしばらく楽しむことができます。黄色い花を咲かせるホトトギスもありますが,県内には自生していません。分級の周りの山際にたくさん自生しています。色の濃さの変異もあり楽しめます。

平成17.8.26 三次市粟屋

ムラサキケマンの写真
ムラサキケマンCorydalis incisa
ケシ科
 平地や山麓の日陰でやや湿ったところに生える越年草です。華鬘(けまん)とは仏殿の欄間などの装飾具で,細かい切れ込みが入った葉を見てたとえたものでしょう。全体が柔らかく,傷つけるとやや悪臭があります。子鹿学園の駐車場付近に生えています。

平成18.4.26 三次市粟屋

 
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